「むずかしい」「何を言っているのかさっぱりわからない」
と、よく聞くシュタイナーの思想「人智学(アントロポゾフィー)」。
ちょっと、そんな世界にふれてみたく「はじめてのシュタイナー」という本を手にとってみました。
ルドルフ・シュタイナーとは
オーストリアやドイツで活動を行った、神秘思想家、哲学者、教育者。
もともとは、ゲーテ研究家として、また、哲学者として活動していました。
その後、神智学と関わるにつれ、自身の独自の思想である「人智学(アントロポゾフィー)」を構築します。
物質世界を越えた精神世界「人智学(アントロポゾフィー)」に関する講演を行い、数多くの著書を残したシュタイナー。
シュタイナーによる医学、農業、教育、芸術、建築、経済などの多方面にわたるその思想は、近代の諸問題を克服するために実践・模索されました。
ちなみに、私が初めてシュタイナーに興味を持ったきっかけは、シュタイナー農法とも呼ばれるバイオダイナミック農法を知ったときでした。
オーガニックの最高峰とされているバイオダイナミック農法で栽培された作物は、オーガニックの本場ドイツでもやはり、別格のようです。
シュタイナーの伝えたかった生き方
「シュタイナーの伝えたかった生き方は日常生活にある」と、著者である志賀くにみつ氏は言います。
本当の生きがいを感じる
感動したり、忘れられない物事や人との出会いなどの中に生きる意味を理解するヒントがある。
- 自分は今まで、いつ素晴らしいものに出会ったのか?
- 将来、素晴らしいものに、いつ、どこで出会えるのか?
- 出会うにはどうしたらいいのか?
こういった問いかけを自分にしてみるというのが、シュタイナーを理解するための出発点になる。
「知識を増やす以上に素晴らしい体験を増やす。」
そして、その自分の体験した素晴らしいものの中の共通点を探すことが重要。
無上の幸せを探す
子供のように、好きな事に夢中になる。
他の事を考えずに、一心不乱に打ち込んで時間を忘れる。
こういった時間にしばられない「永遠性」を感じて生きること、その感覚を味わうことが無上の幸せとなる。
現代人はプライベートを時計の針に支配されすぎているため、限られた時間をプライベートな面まで影響させなくてもよい。
限られた時間から自分を解放させることが自分を大切にすることにつながる。
まわりを信頼する力
赤ちゃんや小さな子供は、周りの人に対する盲目的な信頼感をもっており、これは、この世にあるものを信じ切る能力。
それだけ、大人より心が開かれているということであり、その分素晴らしいものと出会う可能性が高い。
そして、子どもは、素晴らしいものを見る力の方が強いため、裏切られるような体験を積み重ねても、その都度立ちなおる。
大人の場合は、裏切られることを覚悟して相手を信頼するのは至難のわざではあるが、何かを信頼していないと生きがいを感じられない。
「自分を信頼」することが、生きがいを得る上で大事なことであり、それができれば裏切られたと思わなくなる。
人間らしいものとは?
動物にはなく、人間に特徴的なもの・人間らしいものは、「本当のわたし」であり、その役割は、人生の中で素晴らしいものを発見し、永遠性と出会い、それによって生きがいを見つけることであると、書かれています。
人間の理想は、自分の人生そのものを素晴らしいと感じ、そこに真実を造り、これからもあってほしいと願うもの(善)に仕上げることです。
(はじめてのシュタイナー)
永遠性と出会う時に体験する「真・善・美」
「本当のわたし」が永遠性に出会う時に体験する3つのこと。
「美しさ(美)」、「本物(真)」、「これからもあってほしいという願い(善)」
これらの3つを永遠性の中に見出し、心が動かされる。
参考文献:「はじめてのシュタイナー」
まとめ
シュタイナー思想の鍵は「永遠性」であり、あらゆる対象に「永遠性」を見出すには、五感で感知するだけにとどまらず、それを越えた感覚でも感じること。
つまり、「日常に追われる自分」と「永遠性を求める自分」をしっかりと分けることが大切であり、本能的な快・不快の感情だけに左右されずに、自らの霊性をもって、さらに奥の背景にまで意識を向けるということが、人間だけが可能な「人間らしく」生きるということのようです。
「永遠性」を見出すための日々の鍛錬
- すぐに、あきらめていたことをもう少し踏ん張ってみる
- 人に対して、性格を把握することだけで判断するのではなく、どうしてそういった性格を形成するようになったのかなど、もっと奥も見るようにする など
時間は大切なものであり、肉体には寿命という時間の制限をはありますが、肉体を越えた霊性の部分では常に「永遠性」を求めているので、プライベートにおいて時には時間から解放されるというのは必要かつ大切なことなのかもしれません。
「はじめてのシュタイナー」は、かなり嚙み砕いて書かれているので、とてもわかりやすく、意味が分からず悶々とすることもありません。
シュタイナーの書籍はハードルが高いと感じておられる方の入門書としておすすめです。