マンガ“呪術廻戦“に見る日本の闇の系譜「呪術の日本史」

魚座シーズンの影響なのか...、呪術に関する本が読んでみたくなりました。

先日、本屋に行ったときにパラパラと立ち読みした加門七海さんの本「呪術の日本史」が面白そうだったので、電子書籍で購入です。

「呪術廻戦」と照らし合わせて紹介される呪術の歴史に引き込まれる！

日本が、まさに呪術大国ということをひしひしと感じる一冊だったわけですが、５つの呪術系統である神道・道教・陰陽道・修験道・密教についても解説されていて、日本古来からの流れがわかりやすく紹介されています。

記紀に登場する日本の神々に始まり、安倍晴明などの陰陽師や空海などの様々なエピソードで登場し、呪術廻戦の登場人物との関係性も紐解かれていて面白い。


天才的な呪術の使い手として空海と五条悟、陰陽道の使い手として安倍晴明と伏黒恵とのつながりや、狗巻棘が使う「おむすびの具」の言葉の考察も楽しめました。
（呪術廻戦って奥深い背景が盛り込まれた漫画なんだなと改めて感じた次第です。）

そして、京都と東京の結界についても興味深かったです。

さらに、著者である加門七海さんのあとがきの最後に書かれた“現代版の呪い”についての文章も印象的でした。

『呪術廻戦』が示す呪いとの向き合い方

　上司への愚痴、仲間への嘲笑、社会への不満･･････SNSには日々呪いが溢れている。呪詛には一つの特徴がある。それはあくまでも自分発信のものであり、呪詛された側は呪詛している相手のことを知らない、という点だ。安倍晴明などの逸話でも、呪詛したものの正体が露見すると呪詛した側が逆に呪われてしまう。藁人形に五寸釘を打ち込むという最も知られている呪詛である丑の刻参りは、その姿を決しみられてはいけない。しかし、自分お名前が記された藁人形をみて「こんなのは迷信だ」と一笑に付す人は稀で、誰しも気持ち悪く感じるはずだ。

　こうしてみると

呪詛とSNSとがよく似ていることがわかるだろう。匿名性があるSNSでは、発信者の身元は隠されたままだ。しかし、自分について悪意のある書き込みをされたものはその言葉に縛られ、少なからず影響を受ける。中にはSNSの書き込みによって自ら命を絶つ者までいる。SNSは現代版の呪いでもあるのだ。

　『呪術廻戦』では呪い＝呪霊はすべて、人間の「負の感情」から生まれるものという設定となっている。呪霊という超自然的な存在による被害という理不尽は、すべて人間がもたらしたものとしたのだ。このことはある意味で人々により強い自我を求め、他者に対する無意識の行いが大きな被害をもたらしていることを象徴しているように思える。

　現代社会では今までにない呪詛に満ちた時代となった。そのような中で、周りの同調圧力に屈せず、自らの信念をもとに考えて行動する虎杖悠仁や呪術師たちの姿は、現代社会における呪いとの向き合い方のひとつの答えとなるだろう。

　人が存在し続ける限り、呪いはなくならない。しかし、いかに呪いを生まず、自分に向けられてきた呪いにどう対処するか、『呪術廻戦』はそんな現代舎かいの生き方を私たちに示してくれているのだ。

　コロナ禍による自粛生活、新しい生活様式の浸透によって、直接的なコミュニケーションは減少し、リモート化が一気に進んだ。このことにより、以前にも増してSNSで呪いが大量生産されるようになった。

　呪い全盛の時代、それが私たちの生きる現代なのだ。

呪術の日本史 （宝島SUGOI文庫） [ 加門 七海 ]

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『呪術廻戦』では、誰もが日常的に抱いている他者から認めてもらいたいという承認欲求が呪霊という姿に具現化し、そして同調圧力が呪いを増幅させると著者は書いています。

そして、登場する呪術師たちは自分が自分を認めることができる“高位の承認欲求”を持つ者たちで、自ら呪霊を生み出さないとも。

まさに、個の時代である風の時代を軽やかに生きていくには、呪術師のごとく高位の承認欲求が必要であると言えそうです～。