愚者とデュオニソス

占星学を学ぶ上でギリシャ神話を知っておいた方がいいと言われていたので、友人におすすめの本を教えてもらいました。

ギリシャ神話や神々がモチーフの「神託のタロット」。

購入しようと思ったら、中古品しか入手できず...。
（なんとか、「ほぼ新品」の状態の良いものを購入することができました。）

さて、時代天体と呼ばれるトランスサタニアンの一つである天王星に対応しているタロットカードは愚者（The Fool）ということでした。

で、こちらが神託のタロットの愚者。↓

ギリシャ神話の最高神ゼウスの息子であるデュオニソスです。

酒と恍惚の神、デュオニソス。

以前にギリシャ神話の神々が登場する漫画「コレットは死ぬことにした」を読んだのですが、登場していたデュオニソスのキャラ（宴会大好きで、酔っぱらっていることが多い）のイメージからも確かに「愚者」っぽいと思ったのですが、ユング派の分析家であり、心理学と占星術を融合させた占星術家の方が書かれたデュオニソス（愚者）の解説は深いものでした。

　心理的には　デュオニソスこと愚者は、道の世界へ飛び込もうとする内面の衝動の象徴だ。私たちの保守的で慎重で現実的な一面は、この荒々しい精神をもつ若者を恐怖をもってみつめるだろう。彼は運を信じ、なんの躊躇もなく、断崖の向こうへ身を躍らせようとしている。ディオニュソスの行為は、形式や事実や秩序の世界に縛られている心の一面から見れば狂気でしかないが、深く掘り下げてみると、単なる愚行ではない。それは新たな変化を引き起こすために突然湧き上がる衝動である。そこには合理的な理由もなければ事前に計画された行動基準もない。この神が来ている動物の革は、人間の直観的で理性に基づかない側面が、動物的な一種の第六感であることを示すのだろう。現実世界に疲れきってうんざりした彼の耳には、音楽さえも楽しく響かない。最高神の息子であるディオニュソスが聞こうとしているのは、父の精神なのだ。しかし、彼は地上で人間とともに生きることを運命づけられている。未知の世界への衝動がいつ私たちを突き動かすのか、それがゼウスのいる天からくるのか、それとも暗い黄泉の国からくるのかは、知りようがない。　

デュオニソスこと愚者は、変化を起こし未知の世界へ人生を広げようとする、理由なき衝動の象徴だ。愚者が旅の出発点に立っているように、私たちも彼が象徴する謎めいた衝動に突き動かされたとき、旅を始める。このような理性とは無縁の衝動は、ときに破壊的な力を、ときに創造的な力をもつ。両方に働くこともしばしばだ。破天荒な神は崖から身を躍らせて、痛みを伴うばかりか命さえ危うい状況へ飛び込むが、そこから創造的な何かが始まる可能性もある。なぜ自分が精神の糧を求めるのか、自分でも理解できずとも、崖から飛ぶことができるのだ。だが、こうした別世界からの呼び声に反応しなけらば、単調で目標のない人生を送り、人生の終わりに、自分は何を失ったのか、なぜ世界が空虚に感じられるのか、考えることになるだろう。

　このように、愚者とは非常にあいまいな像である。旅に出る辞典では、安全にゴールできるという保証はまったくないからだ。それでも、旅を始めに野はこの神を否定することに等しく、ひいては私たちの内面の若さや創造性を、そして自分自身よりも大きな存在と触れ合う機会を、すべて否定することになるのだ。

「神託のタロット」より

人間と共に生き、苦しみを共有するように父であるゼウスに命じられたデュオニソスは、従者や動物たちを引き連れ世界中を旅し、権力や富への執着を手放したいと望む者に深酒による陶酔と精神的救済を与えます。

そして、最終的にはオリンポスに呼ばれゼウスの右腕として迎えられます。

愚者による衝動に突き動かされて始めた旅は、まだ結果はわからないものではありますが、内なる神と共にできる旅となれば愚者で終わることはないといった深い意味があるようです。

愚者と対応する天体、天王星は現在逆行中。

2025年1月31日に逆行が終了するようです。

それまでの2か月間、現実世界に疲れ切ってうんざりしつつも、内から湧き上がる衝動に耳を傾ける期間といえるのかもしれません。（ついに冥王星も水瓶座に入った事ですし...。）