18世紀のイギリスの産業革命から様々な環境問題が浮上することとなり、1997年に温室効果ガスの削減行動が義務化された京都議定書の制定からは脱炭素の動きが年々強まってきています。
(かれこれ25年以上も脱炭素って言ってるんですね...。)
そんな脱炭素の動きがどうも空回りしている感じが否めない人間社会とは離れた場所で、自然法則にのっとって炭素循環に貢献してくれている動物たちが!
海に浮かぶ森林のような「クジラ」
今回のクジラとゾウが炭素循環に大きく貢献しているというのを知ったのは、獣医師の森井先生のブログでした。
クジラは、大気中の炭素を回収して自身の体に溜め込むことができるだけでなく、その排泄する糞によりプランクトンの成長が促されることで二酸化炭素が吸収されます。
クジラの存在自体が
地球の環境保護に大きな貢献をしているということは
今回の経済学者たちの分析した経済面からも
明らかになりました。
大型のクジラは、
大気中の炭素を回収して
大気中から隔離してくれます。体内に何トンもの炭素をため込むことが出来、
亡くなると、クジラの体は炭素と共に海底へ沈み
数百年もの間、取り込んだ炭素を海底に隔離すると言われています。クジラは海面近くで巨大な糞を排泄し、
窒素、リン、鉄など植物プランクトンの成長を促すための栄養素として
とても役立っています。
これによって
大気中のCO2が吸収されることになります。もしも
クジラの生息数を
商業捕鯨が始まる前の推定400万~500万頭にまで回復することが出来たのなら
クジラがいるだけで年間約17億トンのCO2を回収できる試算となります。
これは
ブラジルの1年間のCO2排出量を上回る量になります。(参考:nationalGeographic)
動物の価値をお金で換算するというこうした分析結果は、
野生生物を経済発展のために殺し続けてきた人類にとって
あらゆる生き物の価値を見直すきっかけになるのかもしれません。
いまだに人は、
自分の利益を優先し、頭の中がお金儲けのことでいっぱいだからです。クジラのように
あらゆる生き物たちは
実際に
人にも環境にも貢献しています。コンゴ盆地に住むゾウたちが、
生息場所の熱帯雨林に数十億トンの炭素を隔離する手助けをしているという論文発表も行われています。地上に何一つ無駄な存在などない。
しかし、商業捕鯨がさかんだった1900年代に個体数が激減。
クジラの個体数激減にともない、プランクトンも減少。
これにより、海の生き物による炭素循環のチカラが弱まったことになります。
大型のクジラは150トンにもなり、寿命も100年以上生きることもあるそうです。
死んだ後も海の底に沈み、炭素の貯蔵庫として機能。
膨大な量の炭素を体内に長期間溜め込んでくれるクジラは、「海に浮かぶ森林のようなもの」と最新の研究でも語られています。
クジラの炭素隔離の仕組み
クジラは自然に炭素を蓄えている
クジラがフンをすると、それを餌とするプランクトンが増え、プランクトンは大気中の炭素を取り込む。クジラが死ぬと、海底で炭素の貯蔵庫となる。このような炭素隔離の仕組みが下図で説明されている。
食物連鎖において、あらゆる動物が炭素循環を担っているわけですが、クジラほどの大型動物となるとその影響は大きなものとなるため、クジラは一頭でも減少すれば、生態系に影響を与えると言われるのも納得です。
森の炭素循環を促すゾウ
アフリカの森林に棲息するゾウたちは、木々や植物を食すことから森の破壊者として考えられてきましたが、実は森を健全に保つ管理をしており、気候的な環境問題への対策として重要な役割をはたしていると科学者らに考えられるようになってきました。
(前略)
NGO「リバランス・アース」の共同創設者であり、1976年からゾウを研究しその保護を図ってきたイアン・レドモンド氏は、イタリアの生物学者ファビオ・ベンガジ氏がコンゴの熱帯雨林で行った比較研究について言及した。
「ベンガジ氏はコンゴ盆地の熱帯雨林2カ所を比較した。一つはゾウがいる森であり、もう一つは数十年前に象牙密猟者によってゾウが絶滅させられてしまった森だ。すると、ゾウのいる森では、地上の生物量、すなわち、森林における木の重量が7~14%多いことが分かった。」
森のゾウは直径が30センチに満たない木々や植物を一般的に食する。これらの木々は最終的に死に絶えるが、その結果として、より成長が遅く炭素吸収量の多い木々が水分や栄養分、光を得て、生存競争に勝つことができるのだという。
研究者らは、ゾウが長年にわたって小さな木を食べてきた森林がどのような姿になるかをモデルで予測した。彼らによれば、ゾウがいる森では、木の量が減ってそれぞれの木の密度が増し、地上の生物量が多くなったという。
レドモンド氏は、そのような森林ではより多くの炭素が吸収されるとIDNに説明した。研究者によると、現実の世界では、ゾウのいる森では、そうでない森と比較して、木々の密度が1平方メートルあたり75グラム増すという。
「ゾウは、食物を選って食べることで、食べた植物を消化し大量のフンをする。ゾウ1頭あたり1週間に平均でおよそ1トンのフンをする。森を歩き回りながらフンをすることで、それは第一級の有機肥料となる。つまり、ゾウが実際上行っていることは森の『雑草取り』だ。炭素吸収量の少ない木々や草、ツル植物を食べ、より炭素吸収量の大きい大型の木の栄養になるようなフンをするということだ。これが長期的にもたらす効果は、森林が炭素を吸収する能力を向上させるということである。」とレドモンド氏はIDNの取材に対して語った。
しかし、コンゴの森林のゾウは急激に減少している。東南アジアにおける象牙需要が当地において密猟を加速させているが、研究者らは同時に、もしゾウが生きていたらそれがどの程度の利益をもたらしたのかということについて知識が十分でないことも理由の一つであるとしている。
コンゴの森林にはかつて110万頭のゾウがいた。しかし、森林破壊と密猟によってかつての10分の1以下の頭数になってしまった。
ベンガジ氏は、もしゾウの頭数が以前と同等に復活したならば、森林1ヘクタールあたりの炭素吸収量は13トン増すことになるだろうと試算している。つまり、アフリカの森林のゾウは1平方キロメートルあたり6000トン以上の炭素吸収に寄与するということであり、これは25万本の木が吸収できる炭素量に匹敵する。
森林のゾウのもたらす経済的価値に関するパイオニア的研究を行った国際通貨基金のラルフ・チャミ博士は、ゾウを生かすことによって密猟者も地域社会も諸国も大きな経済的利益を引き出すことができると指摘している。
「密猟者には選択肢がある。ゾウを殺してカネを生み出すか、ゾウを生かして長期的にもっと多くのカネを得るか、という選択だ」とチャミ博士はIDNに取材に対して語った。
森林のゾウがもたらす経済的価値について試算したところ、ゾウ1頭当たり175万ドルにもなるとチャミ博士は述べている。ゾウを1頭殺して密猟者が得る平均4万ドルに比べるとはるかに高額だ。
「密猟は自暴自棄になった人の最後の手段です。密猟者は市民科学者になり、象の世話をするように再訓練を受け、象の密猟で得られるお金をはるかに上回る年俸を稼ぐことができるかも知れません。」と、チャミ博士は語った。
レドモンド氏は、自身の組織は「地球のバランスを取る」ことを目的としていると語った。地球の生態系的なバランスは崩れており、森林の破壊や産業の拡大、採鉱、道路や鉄道の敷設によってさらに状況は危機的になっている。
「森林は単に木が生えているところではありません。生態系そのものなのです。」とレドモンド氏は語った。森のゾウたちは、その生態系において極めて重要な役割を担っているのである。(03.11.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews
つまりゾウは、人間が畑で作物を育てるように、小さな植物を食べて糞をすることで炭素吸収量の大きい大型の樹を育てていると。
寿命が長く、炭素をたくさん吸収してくれる大樹の森となれば、気候問題の対策の一助となります。
しかしながら、クジラと同じくゾウもまた、密漁により減少。
かつてのコンゴの森には110万頭のゾウがいたそうですが、現在は10分の1以下にまで減少してしまったようです。
ゾウだけでなく、森林破壊により森自体も減少している現状です。
国際通貨基金のラルフ・チャミ博士の密猟者に対する見解からも、「地球のバランスをとる」という広い視野での人間の意識と行動がますます重要となってきているというのが感じられます。
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