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ディオスコリデス自らの観察・研究・実験により書き記された「マテリア・メディカ(薬物誌)」

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ディオスコリデス自らの観察・研究・実験により書き記された「マテリア・メディカ(薬物誌)」

 

本日は夏土用の最終日。

明日からは立秋です。

 

立秋とは思えないほどのうだる暑さ(毎年こんな感じですが)にややバテ気味の日々。

仕事の合間に、水出し緑茶を飲みながら、1か月程前に届いて机の脇に置いておいた日本アロマ環境協会の機関誌「AEAJ」をようやく読みました。

 

特集は、「薬物学の父」ディオスコリデス。

アロマテラピーやハーブなどの自然療法を学ぶ際、歴史に必ず登場する人物です。

ローマ帝国の軍医であり、マテリア・メディカを記したくらいしか知りませんでしたが、ディオスコリデスの人物像やマテリア・メディカの内容も紹介されており、最近、薬草へ興味が向いていることもあって楽しんで読むことができました~。

 

ペダニウス・ディオスコリデスは、ローマ帝国時代の軍医であり、著述家、薬理学者、植物学者。

 

 

非常に科学的な薬効の解説

古代ローマ時代に皇帝ネロの軍医として各地に遠征し、その土地の植物と触れることができたからこそ、多くの植物の研究できたといわれるディオスコリデス。

彼の書き記した「マテリア・メディカ(薬物誌)」は、当時古代ローマに出回っていた迷信や呪術的な記述も多かった本草書や博物誌とは一線を画し、植物とその薬効の解説が非常に科学的にであったといわれます。

 

実際、ディオスコリデスは、当時の過去の文献を引用しただけの書物の多さに嘆いており、自身は文献に頼ることなく、自分の目で観察・研究・実験を行い、確信を持てた薬効をマテリア・メディカに書き記しました。

そんなことが出来たのも、ディオスコリデスが都会人や教養人が鈍らせてしまっていた眼力・嗅覚・味覚をもち、偏見なく自然を観察して吟味することができたからだそうです。

 

マテリア・メディカ(薬物誌)

―第1巻―

香料、香油、軟膏、樹脂、樹皮、果実を産する草や木

―第2巻―

動物、その乳、蜜、脂肪、穀物、食用野菜

―第3巻・第4巻―

根・液汁などいわゆる薬草、種子類

―第5巻―

酒精類、鉱物類

 

ミクロとマクロの薬学

現代医学の礎ともなっているディオスコリデスの薬物学は、「植物に含まれる成分が何に聞くのか?」と薬効に関してミクロに突き詰めたものであり、これが西洋の研究方法。

一方、同時期に記された中国の本草書である「神農本草経(しんのうほんぞうけい)」は、西洋の薬物学との共通部分もありながら、「その植物に何かを加えることによって、どんな効果がうまれるのか?」をマクロに追及して記されているそうです。

確かに、単一の薬理効果で鋭く効く現代医学の薬と何種類かの薬草が処方されている漢方薬からもうかがえますね。

 

マテリア・メディカ記載の植物

 

特集では、マテリア・メディカに記載されているいくつかの植物が紹介されていました。

ページをめくって真っ先に目についたのが、シャクヤク。

5月に薬草ソムリエ講座で大宇陀に行った際に、シャクヤクの鉢植えを置いている家が多かったので印象に残っていたこともあり...。

 

シャクヤク glykyside

女性の冷えや生理不順に有効

「この根は出産後に後産の排出による浄化の行われない妊婦に与える」「月経を促す」とあります。

漢方でも女性の冷えや生理不順などによく用いられるので、似たような効用が書かれています。

効用のほかに「輝かしい光」「神の賜」「月の精」など、シャクヤクにはさまざまな呼び名があることを紹介しているのもまた、興味深いところです。

 

(日本アロマ環境協会機関誌AEAJ No.104)

 

シャクヤクが入っている漢方薬で真っ先に名前が浮かぶのが「当帰芍薬散」。

こちらの漢方薬は、古代ローマ時代と同じ目的でシャクヤクが処方されています。

体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

漢方セラピー

 

アロエは現代医療で使われる下剤としての効果だけでなく、傷口を塞ぐ、ひび・あかぎれを癒すなどの民間薬としての多くの効果効能も書かれているようです。

他には、ヨモギやシナモンなどの身近な植物も紹介されていました。

 

薬酒(ワイン)

マテリア・メディカの第5巻に出てくる薬酒(ワイン)について、以下のようなコラムが記載されていました。

ワインは水で割って飲んでいた?

第5巻にはブドウ酒を始め、バラやザクロなど、多くの薬酒(ワイン)が登場します。

薬草の服用方法として、「ブドウ酒、もしくは干しブドウ酒と一緒に飲むとよい」という記述が多く見られるのも注目したい点。

ブドウ酒は立派な薬で、「日本薬局方」にも掲載されています。

アルコール濃度は12~14度ぐらいで、普通のワインと同じです。

ただ、古代ギリシャでは発酵技術が進んでおらず甘すぎたため、ワインは水で割って飲んでいたようです。

昔のローマ帝国の水は強い硬水で、それを飲みやすくするためにも使われたのではないでしょうか。

 

以前読んだヒルデガルドの宝石療法の本に、ブドウ種にアメジストを漬けておいて飲むと悪酔いしないというのが書かれていたのを思い出しました。

 

 

薬草をブドウ酒と一緒に服用...

薬草だし、水で薄めて飲むからいいんでしょうね。きっと。

 

現代医学の薬をワインで飲むのは、危険です...。

 

 

参考:公益社団法人 日本アロマ環境協会機関誌AEAJ No.104 Summer2022

 

 

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