読書の秋です。
うつみん先生の「心の絶対法則」を読んだあとは、「オートファジー」分野の第一人者と評される吉森保教授の本を。
最先端の生命科学
寿命自体は80代であっても、健康寿命は70代の現代。
およそ10年ほどは、入院したりと寝たきりの状態で過ごしていることになります。
やはり、生きるなら出来るだけ長くまともに動く体を維持できる健康寿命を延ばしたいところです。
細胞の持つ自食作用である「オートファジー」は、そんな健康寿命を延ばす鍵となりそうです。
真核生物がもつ仕組み
酵母などの微生物から哺乳動物である人までの真核生物は、「オートファジー」の仕組みを持っています。
細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除したりすることで生体の恒常性維持に関与している。このほか、個体発生の過程でのプログラム細胞死や、ハンチントン病などの疾患の発生、細胞のがん化抑制にも関与することが知られている。
病気を引き起こすような状態の細胞とならないように、細胞内を浄化してくれる機能が「オートファジー」であるといえます。
真核生物とは?
体を構成する細胞に、細胞核をもつ生物のこと。
動植物、菌類、原生生物など。
寿命と老化は別物?
オートファジーの働きを悪くしてしまう「ルビコン」というタンパク質があります。(著者である吉森氏により発見されました。)
この「ルビコン」が増加する原因は、高脂肪食と加齢ということがわかっているようです。
これらの因果関係を確認するための実験が紹介されていたのですが、遺伝子操作により「ルビコン」をなくした線虫の加齢に関する実験結果が印象的でした。
「ルビコン」のない老いた線虫の動き
「ルビコン」のない線虫は、老いても通常の線虫の2倍動いており、人間に置き換えると80歳でフルマラソンを涼しい顔で走るような衝撃なのだそうです。
老化していれば、その特徴である運動量の低下が見られてもよさそうですが見られなかったため、寿命と老化は違うものと考えることができるというものです。
生物は、加齢により細胞が老化していくことで、それぞれの器官が正常に機能しなくなって寿命を迎えるという風に考えていました。
しかし、肉体は老いずに寿命がくるとパタリと死ぬアホウドリなどのような生物もいるらしく、やはり寿命と老化は別物のようです。
健康寿命を延ばす鍵は、「ルビコン」を抑えてオートファジーが働くようにすることにありそうですね。
免疫力にもオートファジーが必須
オートファジーは細胞内に侵入した病原体を殺す役割は、免疫とも関係があります。
- 免疫細胞の幹細胞がB細胞やT細胞をつくるとき
- 抗体をつくるとき
- 外敵の情報を仲間の免疫細胞に知らせるとき
などに、オートファジーは必要です。
老化による免疫力の低下は、感染症への抵抗力がさがるだけでなく、アルツハイマー病や糖尿病の発症や悪化にもつながると言われます。
まだまだ未解明にこともあるようですが、老化した人のB細胞のオートファージを活性化すると抗体を作る能力が回復することが報告されたりと、オートファージは免疫力にも必要不可欠な存在であることが解明されてきているようです。
オートファジーを活性化させるもの
オートファジーを活性化させるものとして、以下のものがあげられています。
スペルミジン
豆類や発酵食品に多く含まれています。
- 納豆
- 味噌
- 醤油
- チーズ
- キノコ類
若い人は、体内でアミノ酸からスペルミジンを作れますが、加齢により作る量が減少します。
老化した人のB細胞にスペルミジンを投与したら、オートファジーが活発化して抗体を作る量が増えたという実験結果もあるようです。
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レスベラトロール
ポリフェノールの一種。
- ブドウ
- 赤ワイン
赤ワインは、心臓病や動脈硬化も防ぐといわれており、オートファジーも活性化することを考えると飲んでも損はないかもしれないとのことですが、どれくらいの量の赤ワインを飲めば有効なのかは人間の場合はわかっていないようです。
でも、赤ワインとチーズという組み合わせは、スペルミジンとレスベラトロールを摂取できるので、いい組み合わせですね。
その他
- カテキン(緑茶)
- アスタキサンチン(サケ、イクラ、エビ など)
緑茶は無農薬のものを。
スペルミジン、レスベラトロール、カテキン、アスタキサンチンは、サプリメントでも市販されています。
適度な運動
適度な運動は、オートファジーを活性化して、糖尿病を抑える作用があるという報告もあります。
脂っこい食べ物を避けて、腹八分目の食事(和食が望ましい)、そして適度な運動がオートファジーの活性化につながります。
食べ過ぎた場合は、一食抜くなど、自分の身体と相談しながら調整していくのが良いようです。
お酒の好きな人は、程よく赤ワインも楽しみながら。
(できれば、酸化防止剤の入ってないものがおすすめです。)
是非、細胞たちのことを意識しながらの生活習慣を。
参考文献